SCPのはなしをしよう[SCP基礎編]
どこから始めようか。
表題に書いたSCPを語るのは簡単なことではない。この収容プロトコルは味が深すぎる。
そもそもSCPって?という方もおられるだろう。
僕はブログでSCPについて話したことが無いし、どれくらいはじめから話したらいいのかわからない。
多分、SCP-173とかSCP-682(クソトカゲ)から話した方がいいのだろう。けど困ったことに、僕が話したいのはあのSCPなのだ。 と思ってTwitterでアンケートを採ってみた。
すると、以外に存在は知っているけど読んだことは無いので読んでみたい、という人が多いみたいだ。 なので軽めに書いてみよう。
SCPのカルチャー
そもそもSCPを趣味にするというのはどういうことか。
一言で言えば、架空の物語を楽しむこと だ。
物語は極めて事務的な 手順と概要と事例を示した文書 にまとめられており、
詳細に読むことで全容が見えて来、何が起こったのか、何が 恐怖 であったのかがじわじわ伝わってくる。
エキゾチックなホラー事件の警察の報告書を読んでいると言えばわかりやすいだろうか。
とある一つのWikiにあらゆる文書が 特定の文書の の形で数百、数千と投稿されている。
共通点は、自然法則を外れた怪異的な存在であること、
そして、それを保護し、収容する SCP という架空の団体が文書の保管者、所有者、執筆者であること。
SCPはとある架空の団体で、Secure(確保)/Contain(収容)/Protect(保護) の頭文字で、
要は異常な物品、存在、現象を封じ込めることが目的です。
文書の中には、権限要求 だとか 脳内認識の検査 だとか ミーム汚染(認識災害)のおそれ だとか出てくるが、もちろん現実に発生するものではない。
本当にそう思わせるぐらいにリアリティのある、事務的で淡々とした文書が出てくるのがSCPという場所だ。
最も洗練されたホラー作品 と呼ぶ人さえいる。
結局SCPとは何なのか
SCPはとある架空の団体で、Secure(確保)/Contain(収容)/Protect(保護)の頭文字です。
要は異常な物品、存在、現象を封じ込めることが目的です。
いくつかの単語
SCPを見る上でコレなんぞ?となるような用語がある。
用法がブレている場合もあるが、大まかに以下の表の内容は共有されている。
分類 | 単語 | 説明 |
---|---|---|
基本 | オブジェクトクラス | 怪異の収容難易度を示したもの |
基本 | アクセスクリアランス | 職員の役職、どれくらいの機密度の情報にアクセスできるのか、という権限。 |
基本 | サイト | 怪異(オブジェクト)の収容所。 |
オブジェクトクラス | Safe | 特別な手法での管理が不要、人間によって十分制御可能で。 |
オブジェクトクラス | Euclid(ユークリッド) | 特別な手法での管理が必要、制御が困難な場合や人間への悪影響が有る場合も |
オブジェクトクラス | Keter(ケテル) | 厳重な管理と最新の注意が必要、制御不可能な場合もあり、人間への影響も大きい。やばい |
アクセスクリアランス | O5 | SCPの最重要役職にして最高権力。最重要機密を握っている場合が多い |
アクセスクリアランス | Dクラス職員 | 死刑囚を雇用した職員のこと。場合によっては体を張る(間違いなく死ぬ場合でも)ことが有る。 |
情報 | ミーム(Meme) | 《gene(遺伝子)と〈ギリシャ〉mimeme(模倣)を組み合わせた造語》模倣によって人から人へと伝達し、増殖していく文化情報。文化の遺伝子。英国の生物学者R=ドーキンスの用語。by コトバンク |
状態 | 収容違反 | オブジェクト(何らかの怪異)が収容状態を脱出し、コントロール出来ない状態になったこと。 |
ミームだけは一般名詞だ。要は伝播する情報と言い換えても良い。
”カノン”とSCP-001
これも私が語りたいSCPに語るときにおいて必要なことだ。
このSCPは”歴史”をテーマに募集されたコンペティションの勝利作品となった文書で、財団の出自に関連している。
だが、SCP財団の出自には正しいものと思われるものが複数あり、読んでいるうちに、「あれ、これあの文書にかかれていたことと矛盾しないか」と思うことが多々ある。
カノン とはそのままの意味を”正典”といい、要は芯となる正しいストーリー、物語のこと。
SCPのカルチャーにはカノンが存在しない。 正しい設定や原典と呼ばれるものは存在しないので、大多数に広まっている設定でも無視しても良い事になっている。
要は「矛盾してね?」という指摘は、個々の想像力の集合体においては無粋、ということだ。
絶対に死なないトカゲと、生き物を絶対に殺す武器は両立しても良い。
その例の一つとして、”最初のSCPオブジェクト”たるSCP-001が挙げられる。
最初の文書、SCP-001は複数ある。
身もふたもないことを言えば、みんな最初の番号の文書を書きたがったのだ、
そこで、SCP-001の設定は、「存在を隠すためのダミー文書が複数ある」である。
どれも誰かが精魂込めて書いた作品だが、設定上、正しい文書は一つ、ということになっている。だがどれをダミーとしてもいいのだ。
例のSCPオブジェクトは、そんなSCP-001群の中のとある存在である、異常存在を作り出す工場と関連している。
SCPのキモ
あくまで文書は報告書であり、わかりやすい説明では無いときが有る。
あえて冗長な書きっぷりをして機密度を上げる演出にしていることも多々ある。
文書は以下の構成で書かれている
- 番号
- オブジェクトクラス
- 収容プロトコル(封じ込め方法)
- 説明
- (場合によって)補遺、ケース
SCPの始祖であり、最も有名なSCPであるSCP-173 を例にとってみる。
短いが、それでも全文読む必要はないです。
アイテム番号: SCP-173
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-173は常に施錠されたコンテナに保管されています。財団職員がSCP-173のコンテナに入室しなければならない場合は、必ず3人以上で入室し、入室後にドアは施錠されます。職員がコンテナから全員退室し再び施錠するまで、常に入室した職員のうち2人はSCP-173を注視し続けてください。
説明: SCP-173は1993年にサイト-19へ収容されました。SCP-173の素性は未だ不明です。SCP-173はコンクリートと鉄筋で構成されており、クライロン社製のスプレーを吹き付けられた痕跡があります。SCP-173は生きており、極めて敵対的です。SCP-173は直視されている間は動くことができません。決してSCP-173から視線を逸らさないでください。
コンテナに入室する職員は互いに瞬きをする前に警告するよう指示されています。
SCP-173は頸部の圧断や絞殺といった方法で攻撃を行うことが報告されています。 SCP-173が攻撃を始めた場合、職員はハザードクラス4の収容プロトコルに従うことになっています。
コンテナに誰も入室していない間、コンテナの中から石を擦る音がすることを職員が報告しています。これが正常な状態とみなされており、いかなるSCP-173の振る舞いの変化も当直のHMCL主任代理に報告すべきです。
コンテナの床の赤褐色の物質は排泄物と血液の混合物です。これらの物質の起源は不明です。職員はコンテナを定期的に隔週で清掃してください。
このSCPは、鉄とコンクリートで出来た生き物 であり、人が見ている間は全く動かない ことが示されている。
一番重要なのは間違いなく
コンテナに入室する職員は互いに瞬きをする前に警告するよう指示されています。
のところだ。
この文章は、SCP-173の攻撃(頸部の圧断や絞殺)が瞬きの間に可能なことが示されている。
このSCPを動いている瞬間を見たものは誰もいない。
誰も見ていない瞬間に高速で動き、周囲の人間を殺害する。
そのため死刑囚を利用した清掃が行われ、脱走の際には高速移動で収容が非常に難しい…
そういう存在がSCP-173である。
皆さんも見つけたら瞬きしちゃいけませんよ(居ないけど)
少しは伝わっただろうか。
下半身が透明な猫、見ると自分の血で書き足すことを強制される楽譜、死なないトカゲ、
色々な報告書がある。
英語版、日本語版など、各国版のSCPが有る。翻訳するのも一興だ。
SCPの探し方
ここまでが基礎的な話。
こんな乱文で「SCPいいね!」となられた素晴らしい方には、以下のリンクをおすすめします。
個々数年のSCPの記事の中で、高評価を得て、「これぞSCPっすね」というやつが並んでいる。
個人的には、SCP-701”吊られた王の悲劇”が好きです。これはどこともなく出現する演劇の台本で、どの役者とも違う未知の人間が登場し、最後には演者や観客での傷害事件、殺害が発生します。
もちろん、こんなおどろおどろしいものばかりではありません。
SCP-500”万能薬”には、難病治療薬を二日酔いの治療に使ってクッソ怒られる憎めない職員が出てきます。
憎めない、愛すべき職員と超絶えげつない手段によって、ありえない怪異たちが封印されている世界をお楽しみください。
あまりに長くなってしまったので、本来語りたかったとあるSCPについては別記事で語ることにする。
なんてこった。楽しいね。
次に語るSCPはあんまり初心者向けだけど、
意味怖、ホラー好き、資料好きにはたまらないSCPです。 ぜひご賞味あれ。