何かを取り戻すまでの日記

生涯のうちにやりたいこと

キレイ観劇。大人計画はすごい。いくちゃんもすごい

大人計画のミュージカル『キレイ』観劇してきました。

otonakeikaku.jp

久々のストーリーを知らないミュージカルでしたが、結構楽しかったです。大人計画は盛りだくさんですねw

ミュージカルを少しかじった生田オタという、いつもの視点で書いていきます。

コアなネタバレなし。

生きる美しさを描く物語

物語は戦争の絶えない、パラレルワールドの日本を舞台として展開されます。

すこし、レ・ミゼラブルを彷彿としました。ただ西洋とは毛色の違うミュージカル、ネタも泥臭さも比じゃない。でも、日本版のレ・ミゼラブルを感じる場面はたくさんありました。レミゼにもキレイにも、汚辱にまみれた人たちしか登場しませんしね。

若くして拉致・幽閉され、その忌まわしき記憶をすべて忘れて、歳の大きな赤ん坊として戦争の渦中に登場するケガレ。彼女を主役として、貧しい人々、敵対する貧しい人々、金持ち、狂言回し、トリックスター、活動家にと、少ないキャストが役割を変えながら、一人ひとりが大きくストーリーを動かしていきます。

カーテンコールの際には、「こんな少ない人数でやっていたのか」とめちゃくちゃビックリしました。

戦争と消費されるために作られた人工の生命の中で、たくましく生きる人々、命を失った辛さや、矜持を守れない辛さを噛み締めながら生きる人々から、ケガレは多くのことを学び、汚れていきます。

そして、ケガレの過去を思い出しながら、追体験しながら、すべては過去の一点に収束して、物語は幸不幸つけがたい、それでもキレイなゴールを迎えます。

ネタもアドリブもめちゃくちゃ豊富で、爆笑している人もいたし、ニコニコで見ていた。

キレイ、という言葉がとても難しい。セリフとしての「キレイ...」いう言葉はほうぼうで出てくるけれども、生田さんの役名が「ケガレ」であるように、意味のある言葉であり、意味のない名前としても用いられるのがこのワードでした。

カスミとジュッテン

綺麗どころのカスミが一番闇が深いというのも一つのポイントかもしれない、カスミ役の鈴木杏さんの振り切った演技と、ジュッテン役の村杉蝉之介さんの渋い芝居がとても好きだった。 カスミとジュッテンはお互いに関係しながら物語が進んでいきます。

ハリコナ

腫瘍のせいで知能に障害があるが、花を咲かせる能力を持つハリコナ。 そのハリコナ役の神木隆之介さんと、青年ハリコナ役の小池徹平さんの演技は素晴らしかった。

特に小池徹平。いやらしいセリフや知的でアホほどクールな青年ハリコナを好演しており、その影に少年ハリコナの個性もちゃんと見え隠れしていた。 ペイズリー柄っておもしれー!!!!」 のシンクロ率はやばかった。

そして小池徹平はめちゃくちゃ歌がうまい。爽やかでめちゃくちゃいい声。そうだ、WaTじゃん!!

神木隆之介さんはミュージカル舞台初挑戦だったけどめちゃくちゃ楽しそうで振り切っていて、「アレ、あの子神木隆之介だよな??」ってなった。 生田さんとの絡みもすごく良かったけどそれは後述。

ケガレ:生田絵梨花

初っ端からつらそうなケガレの独白と歌唱シーン、ただドスを利かした声と、歌唱力は圧巻でした。今回の出演者の中で一番上手かった。いくちゃん東宝ミュージカル女優ですもんね。

例えば、コゼットやコンスタンツェ、ナターシャやジュリエットなど、生田さんは「お嬢様」の役がめちゃくちゃ多いし、ハマる。天井とかは別として。

それに比べて、今回のケガレは全然違う、真反対も真反対なわけですよ。パンフ等でも出ている、稽古中の松尾スズキさんの「品が隠せていない」という指摘もそうですが、声が高くてキレイで、どこからどう見ても可愛らしいお嬢様なので、なかなか難しいのでは…

とおもったら、幕が上がればそんなことはありませんでした。

ケガレは汚れているわけではなくて、すべてを忘れた少女、「無垢」なんですよね。すこしアホっぽいというか、何も考えてない、何も思いついていない演技として、生田さんのケガレは十分ピュアに見えました。小銭拾うところとか。

麻生久美子さんのミソギ(ケガレが成長した姿)とのユニゾンもキレイだった。ただ、演技としての関連性やシンクロ具合なら、ハリコナのほうがすごかったなあと。ここは男性と女性の違いもあって、なかなか単純比較が難しいところかもしれません。

ただ、後半になるにつれて、ケガレの失われた過去がアンベールドされるにつれて、そうは行かなくなっていきます。どんどん生田さんの新境地が見られて、もう最後のシーンはゾワソワしました。

「ケガレてケガレて、私はキレイ」という言葉には二重の意味がある。 彼女自身がキレイになったのか、キレイという名前に(ケガレに対して)なったのか、それとも物語、人という生き物全体を表しているのか、

現実と、歪められた現実なのかも怪しい世界のなかで、彼女のキレイさは秘められたまま終わりを迎えます。

ジュッテンのポエムを真面目に打ち返したり、突然の井森ダンスを披露するシーンには笑わされました。 井森ダンスは、深イイ話生田絵梨花密着のときに井森さんがいじられたの由来ですかね。

あと個人的に一番笑ってしまったのは、ちょっとした着替えシーン(ほとんどお色気要素なし。ハリコナだけくっそはしゃいでるw)シーンで、生田さんがインターミッションの衣装を着てたことw

完全にこれなんですよ。笑

下は柄が違ったけどショーパンで。まあインナーというか部屋着っぽいけどw

乃木オタ向けのネタでした。

ハリコナとの絡みにほっこり

生田さん演じるケガレは生きる上での記憶を失っているので、まあバカなわけですよ。そこに目を付けた神木隆之介ハリコナ、「俺よりバカがいるーーー!!!」歓喜絶叫、以後結構からみがあります。お姫様だっこしたり、二人仲良く並んだり、踊ったり。

とにかくハリコナがアゴでケガレに迫っていくんですけど、全部顎を押さえつけられて引き下がる。ハリコナは唾をまき散らしてしゃべる、ケガレもそれを見てゲンナリしつつも笑ってるw

めっちゃほっこりしました。ハリコナはバカでたのしそうだし、ケガレも楽しそう。5列目からズームしてそればっかり見てました。笑

圧倒的アドリブ力、大人計画パワー

阿部サダヲ皆川猿時荒川良々を始めとする大人計画の俳優陣が強すぎる。

役者としての個性が役に滲み出ているのに、それでいてはじめから役っぽさ全開でもあるあの魔法は何なんだろう。役者に当て書きされた役でもないのに。

阿部サダヲはマジシャンとして出てくる、結構重要な役で、シリアスでありクレイジーでありコミカルなんですが、阿部サダヲっぽいんですよ、すごく。

でもマジシャンとして、演出や脚本からは全然はみ出てないんです。

それでいて皆さん真面目で、面白くて、遊ぶところはちゃんと遊んでアドリブも聞かす。。

おそらく役をチェンジしても、そうなりそうなぐらいに説得力がある妙演ばかりでした。すごかった。

まとめ

ストーリー自体は複雑ではありませんが重く深く、幻想的な設定と豊富な役者陣で、大満足の舞台でした。

渋谷でやるに相応しい舞台だなあと。コクーンシアターはちょっと拡張高いとは思いますがwもっと汚いところで見てもよかったかもしれない

生田さんの演技も新しい側面と成長は観られました。彼女自身もピュアな役ばかりが続いていますが、

”ケガレてケガレて、キレイ”になった生田さんの演技もぜひ見てみたいと思います。様々な役をした女優としての生田さんを見てみたい、という欲があるからです。

麻生久美子さんのミソギや知念里奈さんのファンテーヌような、生田さんの経験された役の母親役、劇中での成長したキャストにも、今までとは全く違う面白さが含まれています。そういう役に挑む生田さんも観てみたい。

そのためにも、また演劇やミュージカルには沢山足を運びたいと思う次第です。

大人計画を見た側の人間

例えば劇団新感線や維新派みたいに、その劇団の演劇を見た側の人間っていう表現はあると思うんですよ。詰まらない箔付けですが。

今や大人気になっている大人計画の演劇をきちんとみられたことは普通にうれしいです。

こういう目標をアンロックするみたいなノリで、名作や定番に触れることは重要だなあと思っています。何事も経験、とも言いますしね。

またあったら、大人計画の俳優陣をもっといろいろ見てみたい。

そう思わされた舞台でした。