何かを取り戻すまでの日記

生涯のうちにやりたいこと

SCP-2718"そのあとに起こるのは"について

ちょっとだけ、読むのが難しいSCPです。人の死や死生観に根本的に関わるSCPだからです。

SCPについて語りたいとか言いながら、洒落怖みたいなヤバいSCPばっか紹介しているのはなんでなんでしょうか。

以下、創作を創作として、お楽しみくださいませ。

解説

SCP-2718はオブジェクトクラスが無いSCPです。

見た瞬間に、この文書を見たら今すぐ記憶を消せ、としつこいくらいに忠告されます。

例えば、収容が超難しいまたは無理なKeterクラス、ヤバすぎて財団の最終兵器とかしているThaumielクラス、もう終わっているから財団にはどうしようもないApollyonクラスとか、ヤバいクラス分類は色々ありますが、クラス無しというのは少し珍しいです。

文書は、あらゆる警告を踏み越えると、一つの録音データとして存在している事がわかります。

とある技術者と、ミリアム・プレイザーというO5(13人の財団最高権力集団)の一人が出てきます。O5は財団の基本用語ですが、最高の意思決定を行う集団であり、財団世界で一番えらい人と思って差し支えありません。

以下、録音を引用しながら解説していく形で進めていきます。

冒頭

おそらくあと7分間はO5を続けることになります。これでは適切な特別収容プロトコルを自分で案出するのに十分な時間がありません。後はあなたに託します。

O5が出てくるという時点で結構どえらいことなのですが、そのO5が録音で緊急の、そして消去不可能の文書を作るという緊迫感が感じられます。

私がこの任に就いてから、生命を復活させる特異な方法を19例ほど目の当たりにしてきました。そのような力のある装置や実体は非常に様々な形態をとりますが、そういった科学や魔術、こけおどしのトリックを振り返ってみると、基本的に二つの大きな、それでいて単純な分類に分けることができます。 (中略) 復活した人間には死の記憶や経験が存在しないことです。言い換えれば、人類は240万年もの間、思索を続けたにもかかわらず、我々の死後に何が起こるのか、財団の記録にはそのことについての信頼できる直接的な証拠が存在しないのです。

この文書が非常に強烈なのは、私達のいる世界とSCP世界での違いが一つしかなく、その一つが非常に大きなアノマリー(異常物体)を引き起こしている点です。

そしてその違いは「死の克服」に関係があります。

この文書は、死について書かれた文書です。そして、この異常に関する物語と、この異常に関するSCP財団、O5の対応が、一つの物語として語られます。

録音として語る形式は、この文書をよりドラマチックにしています。なぜなら、この文書が言っていることは非常にシンプルだからです。

死者の蘇生

6ヶ月前、私たちは今までにない方法を使って、ロジャー・シェルドン、公的にはO5-11である人物を蘇らせました。理論的な下準備がいくらかかっていますが、それにはうんざりするほどに多くの理由があるのです。 手順の複雑さ、必要とされる技巧、組織的なリスク、言うまでもありませんが莫大な費用。ただすさまじいほどの必要性によってだけでこの試みは正当化されたのです。

ロジャー・シェルドンはSCP財団の別のO5職員です。彼は後任のSCPの任命のために必要な暗号化用のキーを自分の頭の中に残したまま、僻地の岬の上で死体となったのです。

O5はなんとしても彼を生き返らせる必要がありましたが、彼を見つけたときには彼は灰の塊となっていました。

こんなことを言うのは悩ましいことですが、私たちがこの問題に対してとった方法論についての記録はどれも差し迫っている一斉削除を逃れることないでしょう。ですから手短に要点だけ伝えます。私たちは彼の離散したものを集め、彼の量子的な近似物を再構築する計画を立てました。
物理的にも、化学的にも、電気的にも彼に近似したものを。たとえ少しの間しかもたなくても、彼の心臓が再び鼓動を始めるほど、彼のシナプスが発火するほど、そして、彼の口が動くほど、十分に正確なものを作ることにしたのです。

そして財団は成し遂げます。今までのような不完全な記憶ではなく、死ぬ前の記憶を完全にしたロジャー・シェルドンは蘇生し、彼の後任の手続きもろとも全ては昔あったままに戻りました。

よみがえった人間に起きた変化

特に、私たちは彼の習慣にいくらか変化があったことを歓迎していました。私たちが許可するとすぐ、彼は初めて定期的な身体強化の施術を始めました。彼は医療スタッフとボディガードを任命しました。この理にかなった付添い人たちは彼の元から決して離れませんでした。
以前は仕事仲間に同情を覚えることが全くなかったのですが、急に収容プロトコルの安全性や、財団の被雇用者の医療援助に興味を示すようになり、Dクラスを犠牲にすることを非常に嫌うようになりました。そんな中で、私たちはこのことを取り立てて警戒すべき行動であると考えることはありませんでした。
しかし、そうすべきだったのです。

復活前よりも積極的に働くようになった彼に、いくつかのへんか があったことが語られています。延命のための身体強化や、医療への関心、死刑囚の利用への反対など。

およそ2ヵ月前、彼は最初に私に接近しました。彼は、自分がいないときに、私たちが何か成果を獲得したのではないかと聞いてきました。「成果」とは言うまでもなく私たちの専門用語ではありません。彼は生命を無限に持続させる方法を手に入れたのではないかと聞いてきたのです。

しかし、財団がロジャーに施した措置は、死を巻き戻すことはできますが、不老不死を可能にしたものではありませんでした。それに対して彼は明確に落胆しています。

違反。明らかになる事実

そして、彼は突然、いくつかの接触しては行けないSCPと接触をし始めます。(文書中のAPEがそれ)

それに対する尋問に対して、ロジャーは驚愕の事実を口にします。

俺は最初、このことを話す勇気が無かった。お前たちが俺を収容下から出してくれなかっただろうからな。本当はな、俺は何もかも覚えていたんだよ。最初、そこには深い眠りのような甘い忘却があったのだと思う。でも思い返してみると、そんなことは1日も続かなかった。
ゆっくりと、しかし、紛れもなく、俺は自分の死体に夢のような意識を再び充填させた。最初の慈悲深い時間では感覚が無かった。何も見えないし、何も聞こえないし、全く動けない。でも、その後にはすべての神経が再びつながったようで、すべての感覚が分かるようになった。俺の人生で最もそうだった。
俺は動かない物体の中に囚われている感覚があった。そして、苦しみの苛烈さは増していった。幽かなものが、激しくなっていき、そして我慢できないほどのものになっていく。俺はこのことを完璧には表現できない。
だけど絶するほどの衝動の中で、絶するほどの痛みの中で、絶するほどの絶望の中で息を止めている様を想像してほしい。頭が脈打ち、目が膨れ出る様を。終わることのない窒息する夢を想像してくれ。

ロジャーは、生前の記憶を保った財団世界初の人間です。

ですが、ロジャーは死ぬ前の記憶は愚か、死んでいる最中の記憶もすべて保持していました。

ロジャーの蘇生が明らかにしたのは、「人間は死んだ以後も身体の刺激を受け、それを記憶する」という驚愕の事実です。

彼は自分の体が腐り、乾燥し、バラバラになり、生き物餌となることもすべて自分の体に起こることし記憶していました。

私たちは驚愕しました。そしてふと、彼に同情し始めたのです。そしてそのすぐ後に、恐怖が襲ってきました。これほどまでに心臓が早鐘を打ったと感じるようなときが前にあったかを思い出すことができません。
(中略)
最初はほぼ懐疑的な声が上がっていました。皆、穏やかな、気遣っているような、思いやりのある態度で接していました。しかし、O5-8は……彼女は彼の話を聞くにつれ、顔が徐々に青ざめていき、急に行動を起こすことを支持するようになったのです。
「私たちは人間の死をKeterのSCPであると宣言しなければならない」彼女はそう要求しました。「死をいかなる犠牲を払っても収容しなければならない」と。

この文書が記述する対象となるアノマリー「死そのもの」です。

人間が死に襲われると、苦痛をもたらします。それに対して人間は無力です。

その事実をロジャーが明かしたことにより、SCPの上層部は大混乱に陥ります。

そして、

「その先におこるもの」

ja.scp-wiki.net

あくまで創作としてですが、人の死生観を思いっきり問わせるSCPとなっています。

もしこんな異常な事態が起こらないと証明できるのは、財団世界はおろか、私達の世界にも存在していないのですから、このSCPは起こりうるものとしての恐怖があります。

そういう意味でも、ホラー的SCPと言えるでしょう。

もしも死してなお感覚が失われるとしたら…嫌ですねw 死ぬメリットが何もない、火葬も鳥葬もされたくない。土の中で虫になるのも、凍えながら生きるのも嫌だ。宇宙に放り出されるのも嫌だしなあ

そもそもそう感じているのは誰なんだという話ですがね。

死生観

別に僕の死生観を開陳してもいいことはないのでここまでにしておきますが、あくまで創作ですよ!というのは言わせてくださいね。

死は生きる人のために、絶え間ない更新と刷新のために必要な設計であると思いたいところです。

husigiyt.hatenablog.com