何かを取り戻すまでの日記

生涯のうちにやりたいこと

【途中からネタバレあり感想】舞台「仮面山荘殺人事件」を観劇しました。

見てきました。

伊藤万理華さんの卒業後の舞台はもしかしたら初めて見たかもしれません。

公式HPからあらすじ。

製薬会社社長の森崎伸彦が所有する山荘。
交通事故で亡くなった社長の娘・朋美を偲ぶため、
婚約者の樫間高之、従妹の篠雪絵など、8人の男女が集まってくる。
そこへ、逃亡中の銀行強盗が侵入!
外部との接触を断たれた8人は、何度も脱出を試みるが、
ことごとく失敗に終わる。
恐怖と緊張が張り詰める中、ついに1人が殺されてしまう。
しかし、現場の状況から考えて、犯人は銀行強盗ではありえなかった。
残された7人は極限状況の中、犯人探しを開始する……。

はじめに断っておきますが、ネタバレが致命的になり得る作品です。

東京公演は全て終わり、大阪公演も少ないですが、ブログ記事を全文読まれるなら、せめて原作をご覧になってからをお勧めします。

一応、コアのコアなネタバレは伏せていますが、後半はほぼゲロっています。ご注意ください。

伊藤万理華推しのアナタのためのレビュー(ネタバレなし)

まりかさんのあどけなくて可愛らしい感じが結構存分に出ていました。

平野綾さんとのコンビというか、それぞれの役の共通点としてお互いに比較できる部分があったのですが、ちょっと恋する乙女感のある演技は以外に新鮮かもしれません。

妖精感のあるかわいいポップな演技と、獣のように荒々しくダークな雰囲気がある[SUNNY & BLUE]なまりっかとはちょっと違う、ピンクで色っぽい感じでした。

作中で一番のヒロインで、マドンナ的な立ち位置です。

ごきげんよう」のセリフの裏にはいろいろな努力が見えますw

演出の人は、伊藤万理華さんの明るく演じられる部分をSUNNYかSEXYがどっちに振ろうか迷った感じはありましたが、等身大のまりっかを感じる部分も、大人らしさを感じる場面もある"雪絵"さんでした。

後半につれて雪絵さんの心がわかっていくと同時に、あのときのあの場面の雪絵さんはつまりそういうこと?という振り返りが必要になってきて、しかも何回か更新されたりします。これは非常に重要なポイントです。

つまり最初から結構含みのある演技をしているということです。最初から必見です。

見ていない人や円盤が楽しみな人に3つだけポイントをあげるとすれば

  • 仮面
  • 警察官
  • カバン

です。この3つは注目してください。

キャストの方も言っていますが、超舞台向きの王道サスペンス。そして面白い、更に笑いもちゃんとある。引き込まれる。

ぜひご覧ください。ここから下を見ないようにしながら。

ここから先、ガチのネタバレ注意です。

一生原作とストーリーに触れなくてもいいという方のみ読んでください。

ここからガチレビュー【ネタバレ注意】

雪絵さんの演技は、サスペンス全振りのストーリーがバコバコ動くたびに揺れ動きます。

主人公の鹿島と雪絵さんの関係は、二転三転、最後には好青年鹿島の本性、その本性が顕になるきっかけとなった一瞬差した“魔”が明らかになり、それを雪絵さんが知りながら、失望しながらも抑え込んでいたことが明らかになります。

原作読んだことがなかったのですが、東野圭吾渾身のサスペンスという感じで、非常によくできていました。めちゃくちゃ原作読みたくなった。

容疑者Xの献身のトリックも良くできていましたが、単純な推理ものでもなく、叙述トリックでもなく、劇中劇を利用した鮮やかな演技によって、鹿島は見事に罠にはまります。

脚本自体の時系列も非常に良くできています。

ネタバレをすると、朋美を殺したのは鹿島であり、その動機は朋美の友達の雪絵を手に入れようとしたことです。

朋美の過失で鹿島は事故に巻き込まれましたが、鹿島は好青年キャラ全開で朋美の命を救い、更に足を失いバレリーナへの夢も失って自殺するほどの絶望からも救い出し、朋美と婚約するに至ります。

一方で雪絵も鹿島への思いが募りますが、朋美のために鹿島への思いを振り払います。しかしともみの気持ちは鹿島にバレてしまいます。

しかしなんと、鹿島もまた実は朋美に惚れていた。事故で足を失った朋美を救い出した鹿島ですが、青年としての対応以上の想いはありませんでした。思いは雪絵に傾きます。 そして裕福な朋美の実家の伝手で仕事があるという旨味も失いたくない。そのために鹿島は朋美を亡き者にすべく完全犯罪を実行しようとます。鹿島の朋美への愛情さえあれば、実家とのつながりが維持できるからです。どクズ乙。

完全犯罪自体は失敗でしたが、警察は犯罪の匂いを嗅ぎ取れずに事故と断定します。なぜなら朋美は、鹿島の朋美への殺意を示すかのような行動を知り、絶望して自殺したからです。しかし自殺の証拠もまたありませんでした。

私的調査によって自殺の事実を知った家族、結局朋美の自殺であるから逮捕も捜査もできない。

全てを飲み込んだ関係者は凄絶なトリックで、鹿島に「本当に殺意があったのか」を知ろうとします。

雪絵さんの想いはめちゃくちゃ複雑です。

友達(朋美)のフィアンセがめちゃくちゃいい人で、惚れた。でも彼が朋美一筋でお似合いだったから、朋美のために諦めた。

ところがそれは上辺だけで、実は両思いだった。

そこまではいいけど、両思いを実らせつつ仕事も守るために、彼は朋美を殺そうとした。

朋美はとあることをきっかけに殺意に気付きます。しかし朋美はフィアンセの自分への殺意を知り、絶望して自殺してしまった。彼女を死から救い出した鹿島本人に見放された朋美には、死以外の選択肢はありませんでした。

しかもその直前に雪絵さんは朋美さんにあっていた。もう少しで止められたのに。

嬉しいよりも悲しいよりも、「どうして!どうしてそんなことを!!」という雪絵さんの叫びが響き渡ります。

ここがもう何よりも客と演者の気持ちが一致するところであり、このサスペンスの一番心をえぐっているところです。

りっかの演技は見事でした。このために役者としての自分を作った部分もあったでしょう。それぐらいに複雑な感情を押し殺して美しくある必要がある役でした。

前述した3つのポイントですが‥

  • 仮面 鹿島が、山荘に到着したタイミングで仮面を発見します。その仮面が、いつの間にか消えているのです。全く消えたことがわかりませんでした。いつ消えたのか、探してみてください。
  • 警察官 最後に、とある事情で役者が揃います。しかし、キャスト的に一人足りません。警察官がひとりいないのです。 この警察官は、あとで「顔を見られてはいけない人物」として出てきます。 警察官の顔を、よく覚えておいてください。
  • かばん かばんも、超重要アイテムです。一個しか出てきません。よく覚えておいてください。 このかばんは、鹿島のものです。しかし、かばんはいつの間にか移動していました。いつの間にか、登場人物たちの間で移動したことになっているのです。 あれ?と思ったら、あるシーンを思い出して、あ!確かに移動していた!となりました。 これは舞台脚本を書いた方のファインプレーです。よくぞ思いつきました。 一番この演劇のことを思い出して気持ちよかった瞬間です。

キャストの方も言っていますが、超舞台向きの王道サスペンス。そして面白い、更に笑いもちゃんとある。引き込まれる。

ぜひご覧になってください。私はすべてをネタバレしていないので、まだ間に合います。

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